今こそ知りたい!ケレンディアの慢性心不全に対する有用性
今日の診療はどうでしたか。
少しバタバタしました。特に心不全の患者さんの管理について、あらためて考えることが多かったです。
心不全の薬物治療は新しい選択肢も出てきていて、複雑になっていますからね。
そういえば、MRAのケレンディアにHFpEF・HFmrEF*1に対する適応が追加されたと聞きましたが、どのような有用性が期待できるのでしょうか。
ケレンディアの適応追加は、慢性心不全*1を対象とした国際共同第Ⅲ相試験FINEARTS-HFで得られたエビデンスに基づいています。
本試験ではLVEF≧40%の患者さんを対象としていたので、まずはHFpEFのアンメットニーズから整理していきましょう。
*1 本剤の効能又は効果(抜粋)は「慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。」
日本における心不全の現状と課題
現在、日本では高齢化が進行していることから、それに伴い心不全の患者数が増加することが予想されています1)。
実際に、国内のHFpEF(LVEF≧50%)患者数は、高齢化や生活習慣病の増加に伴い増加し続けていることが報告されていますよね2)。
1)日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン. 2025年改訂版 心不全診療ガイドライン.
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/JCS2025_Kato.pdf(2025年12月閲覧)
2)Fujimoto W, et al. Circ J 2021; 85(10): 1860-1868.
そして、HFpEF、HFmrEFの予後は、HFrEFとは異なることが報告されています。2011年から2021年までの間にWET-HF Registryに登録された心不全入院患者さんを、入院年で5群に分け、各群の1年死亡率の推移を見たところ、HFrEF患者さんの死亡率は2011年以降改善が見られた一方で、HFpEF、HFmrEF患者さんの死亡率は、改善が見られていないことが示されました。
HFpEF、HFmrEFの予後改善は心不全治療の重要なアンメットメディカルニーズですね。
ですが、HFpEF・HFmrEFの薬物治療はHFrEFと比べると選択肢が限られています。
そうですね。これまでHFpEF患者さんの予後を改善したエビデンスは限られていました。
HFpEF患者さんを対象として、ARBやACE阻害薬、ステロイド型MRAなど、さまざまな治療薬が大規模臨床試験で予後改善効果を検討しましたが、主要評価項目を達成したのはSGLT2阻害薬の2剤のみでした。
HFpEFの予後改善に対して新たな治療選択肢が求められていますね。
ケレンディアの作用機序
そのとおりです。このような状況で、HFpEF・HFmrEFの新しい治療薬として登場したのがケレンディアです。
ケレンディアはどのように心不全に作用するのでしょうか。
ケレンディアは、ミネラルコルチコイド受容体(MR)に選択的に結合し、過剰な活性化を抑制する非ステロイド型MRAです。
心不全の病態下では、RAA系の亢進に加え、CKD、肥満、糖尿病等の併存疾患を介したRac1活性化やコルチゾール産生亢進などにより、MRの過剰活性化が生じており、これが組織の炎症・線維化、血行動態の異常、電解質調節障害などを通じて、心不全を増悪・進行させると考えられています。
ケレンディアは、このMRの過剰活性化を抑えることで、心不全の増悪や進行を抑制することが期待されています。
では、臨床試験における結果についても教えてください。
国際共同第Ⅲ相試験FINEARTS-HF
ケレンディアの国際共同第Ⅲ相試験FINEARTS-HFでは、LVEF40%以上の慢性心不全患者さん6,001例を対象に、ケレンディアの有効性及び安全性が検討されました。
本試験は、主要評価項目(検証的解析項目)である心血管複合エンドポイント(心血管死及びすべての心不全イベント)に関して、ケレンディア群のプラセボ群に対する優越性を検証する、優越性検証試験です。
試験に組み入れられた患者さんは、ケレンディア群とプラセボ群に1対1で割付けられました。
ケレンディア群の患者背景は、平均年齢が71.9歳、LVEFが52.6%であり、無作為化前の心不全イベントからの期間別では、7日以内が20.3%、7日超~3ヵ月以内が34.3%、3ヵ月超またはイベントの既往なしが45.4%でした。併存疾患は、心房細動が38.8%、糖尿病が40.5%、慢性腎臓病が18.8%含まれていました。
併用薬としては、組み入れ基準にあった利尿薬のほかに、ACE阻害薬、ARBまたはARNIを使用していた患者さんが79.2%、SGLT2阻害薬を使用していた患者さんが13.1%含まれていましたね。
有効性
では、結果を見ていきましょう。主要評価項目(検証的解析結果)である心血管複合エンドポイントの発現率(件/100人年)はケレンディア群14.88、プラセボ群17.70で、ケレンディアは発現リスクを16%有意に抑制し、プラセボに対する優越性が検証されました(検証的解析結果、層別Andersen-Gillモデル(層別因子:地域及びLVEF))。
ケレンディア群とプラセボ群の群間差は28日目から認められたのですね(その他の評価項目:主要評価項目の追跡日ごとの評価、層別Andersen-Gillモデル(層別因子:地域及びLVEF))。
はい。そして、心血管複合エンドポイント及び構成要素(心血管死及びすべての心不全イベント)の発現数などはこのとおりで、各構成要素におけるケレンディア群のプラセボ群に対する有効性は一貫していました。
では、年齢やLVEF、併用薬の有無といった患者背景別ではどのような結果だったのでしょうか。
本試験では事前に規定された項目についてサブグループ解析が行われており、その結果、年齢、LVEF、併存疾患、eGFR、SGLT2阻害薬の使用の有無などによらず、心血管複合エンドポイントに対して全体集団と一貫した結果が示されました。
これらの結果は、さまざまな背景を有しているHFpEF患者さんに対してケレンディアの治療を検討するうえで参考になりますね。
安全性
では、安全性についても教えてください。
本試験において副作用は、ケレンディア群19.2%、プラセボ群10.8%に認められました。
主な副作用はケレンディア群で高カリウム血症が6.1%、腎機能障害が2.8%、低血圧が2.1%などでした。
重篤な副作用はケレンディア群54例(1.8%)、プラセボ群24例(0.8%)に認められ、ケレンディア群の主な事象は、高カリウム血症及び急性腎障害が各15例、低血圧が7例などでした。
投与中止に至った副作用はケレンディア群34例(1.1%)、プラセボ群24例(0.8%)に認められ、ケレンディア群の主な事象は、高カリウム血症が10例などでした。
死亡に至った副作用は認められませんでした。
ガイドラインにおける位置づけ
*2 推奨クラスⅡa:エビデンス・見解から、有効・有用である可能性が高い
慢性心不全における用法及び用量
患者像
HFpEFのアンメットニーズや、ケレンディアの慢性心不全*1に対する有効性及び安全性、そしてガイドラインでの位置づけについてよくわかりました。
では、実臨床では、どのような患者さんに投与を検討するのがよいでしょうか。
そうですね。ケレンディアは、HFpEF・HFmrEF患者さんの予後を改善したエビデンスを有する数少ない治療薬のひとつです。これを機に、HFpEF・HFmrEF患者さんの治療方針を見直してみるのはいかがでしょうか。
*1 本剤の効能又は効果(抜粋)は「慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。」
なるほど。今後のHFpEF治療の参考にさせていただきます。
ケレンディアは、HFpEF・HFmrEF患者さん*1の予後を改善した
エビデンスを有する唯一のMRA*2です
HFpEF患者の増加と治療のアンメットニーズ
HFpEFは高齢化や生活習慣病の増加に伴い増加し続けています。
HFpEFはいまだ予後不良な疾患であり、治療の選択肢も限られていました。
MR過剰活性化抑制の意義
MRの過剰活性化は心不全増悪・進行の主要な原因です。
ケレンディアは、MRの過剰活性化を抑えることで、心不全の増悪や進行を抑制することが期待されます。
HFpEF・HFmrEF患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験FINEARTS-HF
国際共同第Ⅲ相試験FINEARTS-HFにおいて、プラセボに対し心血管複合エンドポイントの発現リスクを16%に有意に抑制しました(検証的解析結果、p=0.007)*3。
重大な副作用は高カリウム結晶(8.1%)*4、その他の副作用は低血圧及び糸体ろ過率減少(1%以上)、低ナトリウム血症、高尿酸血症、血中クレアチニン増加(1%未満)です*5。
心不全診療ガイドラインにおけるクラスⅡaの推奨
日本の心不全診療ガイドラインで、HFpEF・HFmrEF*1における薬物治療として、MRAの中で唯一Ⅱaクラスで推奨されています。
安全性の詳細は電子添文の11.副作用、17.臨床成績の項もあわせてご参照ください。
※1
本剤の効能又は効果(抜粋):「慢性心不全 ただし慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。」
※2
2025年12月現在
※3
国/地域及びLVEFで層別したAndersen-Gillモデル
※4
MedDRA PT「高カリウム血症」及び「血中カリウム増加」
※5
FINEARTS-HF、FIDELIO-DKC、FIGARO-DKCの統合
承認時評価資料(Solomon SD, et al. N Engl J Med. 2024; 391(16): 1475-1485.)
[COI]本試験はバイエルの資金により行われた。
また、著者にバイエルの社員及びバイエルよりコンサルト料等を受領している者が含まれる。
ケレンディア錠電子添文
日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン. 2025年改訂版 心不全診療ガイドライン.
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/JCS2025_Kato.pdf(2025年12月閲覧)
